MARKER DUKE PT   マーカーデュークPT

バックカントリーでハードな滑りを目指すフリースキーヤーに向けて、マーカーから新しいビィンディングが発売になります。昨年の秋頃に全世界一斉に公開され話題になったのでプロモーション用の映像や写真をSNSなどで見かけた人も多いのではないでしょうか。

 

僕も先シーズン2月末ぐらいからバックカントリーでのガイディングやゲレンデを滑る時によく使用しました。要望も多いので今回はこのMARKER DUKE PTについてのレビューです。

 

最初に言っておきますが、ショップで『これ何グラムですか?』と店員に質問する人向けのプロダクトではないです。軽さや、登りの快適さよりもハードに滑走することを重視したプロダクトです。

新しいDUKE PTを語る上で最初にDUKEの歴史を知っておきましょう。ここを理解していないと新しいDUKE PTの狙いが見えてきません。

マーカーは2007/08シーズンにロイヤルファミリーというフリースキーに特化したシリーズを発表しました。この時にデビューしたのが初代のDUKEとJESTERです。それまでスキーの進行方向を向いていたトウピースのバネを横向きに使う技術を開発した事から僕らフリースキーヤーは多大な恩恵を受けてきました。コンパクトになったトウピースから世界初の滑走性能を1mmも犠牲にしない兼用ビィンディングDUKEが生まれ、フリースタイルのジャンルではJESTERが空中でウェイトバランスをブーツに近づけ、その後のトリックの進化に貢献しました。現在の圧倒的なシェア率を見れば世界中のフリースキーヤーに支持されていることが証明できるし、まさに革命を起こしたギアなのが理解できると思います。

僕も、初代DUKEが出る前はアルパイントレッカーやセキュラフィックスなどのアタッチメントをいくつも壊しながら使用したり、エリアによってはスノーシューでスキーを担いで歩いたりと、かなり苦労していました。それ以前から兼用ビィンディングはありましたが、滑走性能に納得できず使っていませんでした。楽して登りたいなら他にもっといいプロダクトはいくらでもあります。これは当時も今も一緒です。DUKEがターゲットにしているスキーヤーはシールで登りクリフからのトリックやビックフェイスにハードチャージするスキーヤーです。つまりDUKEはスキーヤーを選びます。最近主流になっているピンテックビィンディングの滑走性能や耐久性に満足できていない人向けです。雪が深い時にピンテックビィンディング履きにくい人向けではないので注意してください。

毎回言いますが、プロダクトのコンセプトと自分がやりたいこと、大切にしたいこと、我慢できること、などの内的要因をマッチさせる事で自分にあったギアと出会えると思っていますので、その辺を肝に命じてお買い物してください。話題のギアだからとか最新モデルだからとかがあなたにとっても最適なギアとは限りません。それらを理解した上で以下読み進めてください。

この新しいDUKE PTのシステムは、滑走モードでは従来のアルペンビィンディング同様にブーツのコバをホールドし、登行モードではトウピースを取り外し、その下にあるピンがブーツをホールドする仕組みです。

新型コロナの影響で2ヶ月早くシーズンアウトしたので、フルシーズンでテストできていませんがバックカントリーで使ってみてよくできたプロダクトだと感心しました。新しいモデルが出るたびに言いますが『さすがMARKER』の一言です。複雑な構造は故障や雪詰まりなどトラブルの原因になりがちですが、トウピースの取り外しで雪が詰まってモードチェンジできないって事は一度もありませんでした。わざと雪が着いたまま操作したり、日射により重くなった雪でも水分量の多い新雪の中でも。1ヶ月ちょっとの使用なのでシーズン中の全ての雪ではないのですが上出来でした。極寒の中ではテストできてませんが、携帯用の小さいブラシなどの小道具を必要とすることは一度もなかったので大丈夫でしょう。

バックカントリーとゲレンデ、パークとおそらく20回ぐらいの使用でしたがどこも破損、や不具合などは見られません。

登高モードでトウピースを外して歩くことも出来るし、前にいっぱいまで倒して動かないようにロックして歩くことも出来ますが、僕は毎回外してザックに入れて歩きました。足元についている重さよりも背負ったほうが重さを感じにくいからです。あとは予期せぬ事態で破損を防ぐためです。この状態で横方向からの衝撃には弱いかもしれません。ショートハイクやその場に長時間居られない場合などは付けたまま歩き始めてもいいでしょう。外したトウピースはシールのケースに入れてザックにしまいました。どうせシールも同じタイミングで出し入れするのでザックの中をゴソゴソあさる手間が省けます。ピークからコロコロとトウピースを転がしてしまうとアルペンスタイルで滑って降りることができなくなるので十分に注意してください。深い雪の中に落としても見つけるの困難でしょう。

ヒールピース自体は登高モードにしてもいじる必要はなくトウをピンで履くとブーツ位置が前方向に移動するので干渉しません。JESTERと同じ大きなバネが入ったヒールピースを上げ下げする必要がないので楽です。ブレーキのみワンタッチでロックが必要です。この作業は最初コツをつかむまで失敗もありましたがすぐに慣れました。ブレーキのプレートにクライミングサポートが付いていてこの操作はストックでやるより手でやったほうが速いです。クライミングサポートの角度調節は一段階のみで10度のアングルです。キングピンやバロンなどは7度と13度でした。僕はほとんど13度の方を使う機会がないので十分ですがもっと高いのが欲しいって声は聞こえてきそうです。そんな方には過去の記事でアドバイスしてますので読んで見てください。

慣れると上記の操作は片手で全て行えます。山の中の厳しいシチュエーションでこれが結構重要だったりします。

スタンドハイト(スキーのトップシートからブーツのソールまでの高さ)は24mmとJESTERと同じです。今までのDUKEは36mmだったのでこの高さを嫌がっていた一部のスキーヤーには嬉しい設計です。

ここは別にメーカーも狙ったわけではないと思いますが、登高モードでトウピースが軽くなり、ヒールピースは重いままなので、急斜面で登りながら向きを変える時(ジグを切るとき)などはテールが自然と下がりノーズが自然に上がるので向き変えやすいです。

肝心の滑走感ですが『文句なし』の一言です。

前後のコバがしっかりとブーツをホールドするので、当たり前ですが滑走時のブーツのぐらつきや不安感は1mmもありません。かなりハードに滑っていても、もちろんMARKERの他ビィンディング同様に誤解放は一度も経験していません。逆に『お前の滑りはその程度か?』とビィンディングに煽られている感じさえします。

トゥピースが重い分、滑る時に気になりますか?と何人かに質問されましたが、最近のピンテックビンしか履いていない人には正直重く感じるかもしれませんが、僕の感覚だと前に戻った感覚で、初めてピンテックビン使った時、トウの軽さに慣れるまでの方が時間かかりました。最初は『おっ』と感じましたが今はなんとも思いません。

 

主要スペック

DUKE PT16 とDUKE PT12の二機種発売されます。

 

DUKE PT 16

開放値  6-16

適合体重 60kg以上

重量   ハーフペアで1350g  トウピース外して1050g

ヒール  インターピボット3(新型のjesterなどの上位機種に採用されているヒールピース)

税別価格 ¥95,000

 

DUKE PT 12

開放値  4-12

適合体重 30-110kg

重量   ハーフペアで1180g  トウピース外して880g

ヒール  ホローリンケージ2(F12 TOUR EPFなどの軽量機種に採用されているヒールピースの次期モデル)

税別価格 ¥85,000

 

二機種共通して

ブレーキ幅は100mmと125mmどちらか選択可能です。

クランポンはDUKE PT専用モデルが105mmと125mmの二種類発売されます。

キングピン用のピンテッククランポンは装着できません。

ビスのホールパターンは今までのDUKE ともJESTERとも異なるので今お持ちのスキーに載せ替えを考えている人は打ち直ししなくてはいけませんので販売店に相談しましょう。

SOLE ID テクノロジー搭載でアルペン規格、ツアー規格、グリップウォーク規格、の各ブーツソール規格に対応します。当然テックホールが空いてないブーツだと登れませんが、全てのブーツで使用可能です。

 

まとめ

前半も触れましたが、滑走性能を最大限重視したプロダクトです。スペックを見て『良さそうだけど重いなー』と感じている時点であなたはターゲットから外れています。僕も新しいプロダクトは必ず自分でシーズンを通して使った上で人に勧めたいので今年はDUKE PTを使いましたが、日々のガイディングで使うなら正直僕にもスペックオーバーです(笑)。体重65kgでガイドするときは10kgぐらいのザックを背負い滑ってますが、キングピンの方が自分とギアのコンセプトがマッチしているし、これは国内の多くの一般的なバックカントリーユーザーにも当てはまると思います。ここ数年キングピンでガイディングに限らず、プライベートや撮影でも滑りまくってきましたが、滑走性能に不安を感じることはありませんでした。最初はピンで固定するトウだと不安に思う人も多いですが、使えば僕と同じように、すぐ信頼できると思います。MDVのインターナショナルチームのメンバーも昨年までキングピンで素晴らしいパフォーマンスをしている数々の映像作品からもキングピンの滑走性能の高さが理解できると思います。見栄を張らずに自分にあった軽量なギアの方が登りで体力を温存でき、結果としていい滑りができるかもって人は多いと思います。何よりも滑走性能を重視し、ハードに山を攻める足自慢のスキーヤーにぜひ履いてもらいたいです。現場でDUKE PT見かけたら『おっ!この人やるかも』と一目置きます。

僕が考える一般のスキーヤーが対象になるケースも紹介します。僕のオススメの使い方は普段ゲレンデで滑ることが多い人やゲレンデで使う機会が多いスキーに取り付けするといいと思います。バックカントリーで使うピンテックビンが付いたスキーをゲレンデでパウダーデイに使ってたりするとゴンドラの乗り降りとかで脱ぎ履きがめんどくさかったりするし、軽量なギアは当然、耐久強度が低かったりするので寿命を縮めたり故障の原因になりかねません。ゲレンデメインでの使用を考えているけど、たまに山にでも使いたいなんて人にはいいプロダクトだと思います。僕もREVOLT 104にDUKE PTを取り付けしましたがこの辺が理由です。今季はこの組み合わせでゲレンデやパークをよく滑りました。このように滑走性能の高いスキーとの組み合わせを強くお勧めします。ツアービィンディングと思って軽さ重視のツアースキーにつけてもお互いの足を引っ張り合うだけでそれぞれの良さが発揮されません。相性についての過去記事

ぜひ手に入れたいと思う方は、どこのお店の棚にも並ぶような商品ではないので、今の時期にプロショップでのご予約をお勧めします。

バックカントリーでのランにフリースタイルな滑りを融合させることは、現在このシーンの最先端の滑り方で、多くのスキーヤーが実現出来ている滑り方ではないです。なぜMARKERはそこまでニッチなプロダクトを開発するのかと僕も疑問に思いましたが、僕が理解するところ、やはりビィンディング界のトップを走る専門ブランドとして、細分化される全てのスキースタイルを網羅する商品を作る使命感ですね。同じバックカントリースキーヤーでもアルピニストなどの最軽量ギアを必要とするスキーヤーから今回のDUKE PTまで、スタイルの異なるニーズに応える専門ブランドとしての使命感です。12年前に初代DUKE を発表したら『待ってました!』と一部のハードコアなスキーヤーたちは喜び、瞬く間にシーンのスタンダードになった当時を思い出しました。DUKE PTやっぱり最後に一言書くとしたら『流石だわ。マーカー』です。

白馬で LOCUS GUIDE SERVICE(ローカスガイドサービス)というガイド会社を経営し、バックカントリースキー、スノーボードのガイドをしています。

それと同時にバックカントリーで、より満足する為の滑走技術の向上を目的としたスキーレッスンやセッションをゲレンデで開催しています。

ぜひ一度、雪上での素晴らしい時間をライブで共に体験しましょう。

古瀬和哉 プロフィール

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